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橋口さんのお茶碗

笠間の陶芸家、橋口信弘さんの個展が学芸大学のうつわの店、にて
昨日まで行われてました。
最終日の昨日、在廊している橋口さんに会えることも楽しみに
妹一家とともに足を運びました。

久しぶりに見る橋口さんの器たちはどれもダイナミックでかっこよく
あれこれ目移りしてしまいます。
重箱も素敵だったし、花入れも、四角い器や大皿も
大らかでありながら絶妙なバランスで繊細さも垣間見え
あれもこれも欲しくなってしまいました。

今回は行く前から「新居用にご飯茶碗が欲しい!」と思っていて
飯碗だけのつもりが湯呑み(汲出し?)茶碗も気づいたら購入。
早速今日の食事に使ってみて、やはり器は大切だなぁと
しみじみ感じてしまいました。
いい器で食べたり飲んだりすると本当においしく感じます。
橋口さんの器で食べておいしく感じるのは、
その人柄によるところも大きいと思うのです。

橋口さんには笠間で過ごした最後の2年近く、大変お世話になりました。
当時行き場がなくなってしまっていた私が
「私はもう東京に帰ります。焼き物をやりたくなったら
 またいつでもやれるから大丈夫です。」
と言って東京に帰ろうとした時に
「はまちゃん、そう言って戻って来れなくなった人を何人も知っている。
 今東京に帰ったら、多分この世界に戻って来れなくなるよ。
 だから、うちの仕事場を使っていいから、自分の仕事をやってごらん。」
と言って快く仕事場を貸して下さった笠間時代の大恩人です。
当時ご夫婦で使っていた仕事場は、決してスペースが余っていたわけでもなく
3人で仕事をするにはやや手狭だったと思います。
自分が独立してみて、自分の仕事場に他人を入れるということが
一体どれだけ大変なことなのか、今になるとよくわかります。
なかなか真似の出来ることではありません。
その懐の大きさに感謝の念は深まるばかりです。

橋口夫妻の側で仕事をしていた時期というのは、
私にとってとてもとても貴重な時間でした。
素晴らしい仕事をする作家の方の仕事ぶりを
弟子でもないのに横でつぶさに見ることが出来るというのは
今思えば、本当にラッキーだったとしか言いようがありません。
学ぶことが沢山あったし、とても楽しかったことを憶えています。
何より働き者で仕事が大好きな人の側にいるのは気持ちのよいことでした。
橋口陶房で試行錯誤しながら自分の作品を作り始めたあの時期が
ある意味「作家としての出発点」だったと言えます。
精神的には冬のような時期でなかなか辛かったのですが
だからこそ橋口家で過ごすあたたかな時間が
私の心を温めてくれたように思います。

あの時橋口さんが助けてくれなかったら
おそらく私は焼き物を続けて来られなかったでしょう。
こうして今も焼き物を元気に続けていることが
私が橋口さんに対して出来る唯一で何よりの恩返しかもしれません。

橋口さんの作る器のたっぷりとした大きさと大らかさは
橋口さんという人そのものの大きさと大らかさのように思います。
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